アメリカ アリゾナ タリアセン・ウエスト
- 私の旅行記
- 2019年4月15日
- 読了時間: 7分
更新日:2020年12月28日

こちらは、アメリカを代表する建築家「フランク・ロイド・ライト」が、冬の間の居宅として最後まで住んでいた「タリアセン・ウエスト」です!
「旧帝国ホテル」の設計も手がけるなどして、日本でも有名な建築家「フランク・ロイド・ライト」。「タリアセン・ウエスト」は、「フランク・ロイド・ライト」の傑作の一つと評価され、米国の「歴史的建造物」に指定されています。
建物の内部は居住部分をはじめ、劇場や建築家のスタジオ、設計室などとても広く、注目すべきはそのデザインで、一見奇妙な形をしながらも実に美しく、周囲の風景とよく調和しています。「タリアセン・ウエスト」は、一般公開されており、ガイド付きツアーがあります。
【歴史】

「タリアセン・ウエスト」は〖ウィスコンシン州〗にある、夏の家である「タリアセン・イースト」と対称な存在であり、1937年に「スコッツデール」北西部のこの土地を購入した「ライト」は、ここに「タリアセン・ウエスト」を建築し、以後1959年にこの世を去るまでここを冬の間の居宅としていました。
また、「タリアセン」とは「ライト」が弟子たちとともに建設した設計工房および共同生活のための建築であり、通常私たちがイメージする設計事務所とは異なり、ライトの事務所は「タリアセン・フェローシップ」と呼ばれる一種の建築塾というかたちで運営されており、1932年から自給自足の共同生活を営みながら、建築教育と実践を行なってきました。
「タリアセン・ウエスト」が完成してからは、「ライト」らは毎年2回キャラヴァンを組み、〖ウィスコンシン州〗と〖アリゾナ州〗の間の大移動を繰り返していました。
「タリアセン・ウエスト」は、「アリゾナ」の砂漠の気候を考慮されて造られた施設であり、砂漠との関係性や、その素材を建築にどのようにしてうまく生かすかという問題に対して、さまざまな有機的な試みがなされた「フランク・ロイド・ライト」が考えたプレーリー建築を代表する施設との一つとなっています。
現在もこれらの建物が設計当初の目的のまま、住居、作業場、教育施設として活用されています。
【特徴】

「タリアセン・ウエスト」の建築様式が現在の建築様式に与えた影響は大きく、「フランク・ロイド・ライト」は設計をスケッチに正方形の入れ子単位として行い、それをもとにして建物を幾何学的に配置し、大きさはその正方形を一単位として連続的に伸ばしていくという手法を用いました。
このようなユニットという概念を用いての建物の設計は、「フランク・ロイド・ライト」の建築の大きな特徴の一つであり、他の多くの建築においても三角形、長方形、六角形のユニットを積極的に利用して、これを基にして設計を行っていました。
このようなユニットといった考え方は日本の建機津様式にある「畳」の考え方と似ていることや、「フランク・ロイド・ライト」の作品が日本にもあることなどから、少なからず日本の影響を受けているのではないかと考えられます。
〖美しい外観〗

低層で水平方向に広がる建築は、アリゾナの自然と調和してユニークな風景を作り出しており、石垣に屋根を載せたようなデザインが自然にできたものと人工物の間のような関係で非常におもしろいです。
また、連続する鉄骨の構造を見せることでラインが強調され、より人工物としての存在感を示しています。連続する鉄骨のビームのアーチが、自然と対比されて空間を規定しているように感じます。
また、「アリゾナ」の砂漠の石が用いられている壁の部分は、通称「砂漠の素石の壁」と呼ばれ、型枠内にランダムに配置した石にコンクリートを流し込み、石の表面を型枠から露出させ、施行後に余分なモルタルを削るという独創的な工法を採用が採用されています。
その壁の上に山の傾斜に応じたレッドウッドの架構が造られていて、それが建物の内外に露出されているため、建物が自然と一体となっている印象を受けます。
〖こだわりの内部〗

「フランク・ロイド・ライト」は自分が設計を行った建物に合わせて、テーブル、椅子や照明などのデザインも自らが行い、建物自体だけには限らずに、このように建物と家具などとも切り離せないものとして有機的に結び付けていっているところも大きな特徴となっています。
また、石の混ざったコンクリートや大きな開口部のおかげで外部と一体になったような感覚になり、ある場所では洞窟のような雰囲気があり、窓から自然光が入ってくるのでとても明るい空間が広がります。
天井が低い造りになっているのですが、座るとちょうどいい感じの高さに感じて非常に心地よいです。外壁が内側にそのまま続いているのも開放的に見せるデザインなのか、開口部の割付のデザインもとてもおもしろいです。

更に奥の方には「ライト」が暮らした部屋があり、「ライト」が実際に使っていた部屋には当時を再現した家具が並べられています。
また、「ミーティングルーム」は先住民族や日本的な装飾がされていて、独特な雰囲気を醸し出しています。

「講堂」となっているスペースは「ライト」の好きな赤、タリアセンレッド一色の空間になっており、もう一つの「ホール」では半地下に向かってスロープになっています。
「ホール」は平行な壁や天井がなく音響を考慮して作られています。

このほかにも、「アリゾナ」の乾燥した暑さに対処するさまざまな試みが建物になされています。
こういった、「ライト」がデザインした家具などは「フランク・ロイド・ライト財団」の人々によって復刻版として復活しています。
【ツアー】

建物内部は、観光客向けに約1時間半のガイドツアーが催行されていますので、各部屋を詳細に知りたい方におすすめです!著名な建築家の作品について触れてみるのもとても貴重な体験です。
また、「タリアセン・ウエスト」には夜のツアーというのもあり、夜ライトアップされた姿もとても美しいですよ!
【アクセス】
「タリアセン・ウエスト」は、「フェニックス」郊外の「スコッツデール」という街にあります。
「フェニックス」からは車で約30分と比較的アクセスは良好です。
【フランク・ロイド・ライト】

「フランク・ロイド・ライト」は、アメリカの建築家であり、「ル・コルビュジェ」「ミース・ファン・デル・ローエ」とともに、近代建築の三大巨匠の一人として数えられる世界で最も著名な建築家の一人。
「空間の魔術師」とも称される彼の建築理想は、終生一貫し、より豊かな人間性の保証に寄付する建築「有機的建築」の理想を追求し続け、1191にものぼる作品を遺し、その内の460の作品が実現されました。
「有機的建築」とは、「プレーリー建築」から「ユーソニア建築」までの特徴を全て含んだもので、合理的で無駄が無く、空間全体が機能的で、価格も施主の意志に沿ったものであり、建築は美しくなくてはいけない、という考え方です。
「フランク・ロイド・ライト」が生涯をかけて唱い続けた「有機的建築」は、現代でもその輝きを増して私たちの心に訴えかけ、無機質になりがちな現代において、より人間的な豊かさを提供してくれる思想なのです。
いかがでしたでしょうか。
「タリアセン・ウェスト」は、「フランク・ロイド・ライト」の建築思想を存分に味わうことができる建築です。
当時は、屋根の部分は麻が張られているだけだったという大胆で柔軟な気候への対処の仕方などは「ライト」の豪快な考え方が良く現れており、建物に入ったときは、まず窮屈な印象を与えさせて、奥に進むにつれて広い空間で安らぎを与えるという「ライト」の建物で人をコントロールする手法が「タリアセン・ウエスト」でも見ることができます。
また、砂漠の乾燥した気候に対してプールや噴水を作って対処しているところや、火を噴く竜の置物、陰が牙に見えるように作られた屋根の凹凸部分などは、「ライト」が建築を単なる仕事としてではなく芸術として楽しんで行っていることが良く伝わってきます。
「ライト」の考える有機的で自然にも溶け込む建築の姿がここアリゾナで見られ、「フェニックス」へ行くことは中々ないと思いますが、是非とも訪れてみてほしい「ライト」の建築の一つです!
【基本情報】
タリアセン・ウエスト
住所 : 12621 N Frank Lloyd Wright Blvd, Scottsdale, AZ 85259
電話:+1 480-627-5340
開館時間 : 8:30~18:00
入館料:$34(ツアーのみ)
※記事内容は執筆時点のものですので、最新の内容をご確認ください。
留言