スペイン バルセロナ カサ・バトリョ:魅力・見どころ・チケット購入方法・アクセス方法・基本情報まで徹底ナビ!
- 私の旅行記
- 2020年11月22日
- 読了時間: 26分

こちらは、大建築家「アントニ・ガウディ」の傑作の1つで、大富豪「ジュゼップ・バトリョ」のために改築した邸宅「カサ・バトリョ(Casa Batlló)」です!
インパクトのある外観と美しい内装を併せ持つ「カサ・バトリョ」は観光客にとても人気があり、バルセロナに複数ある「ガウディ」建築のなかでも「サグラダ・ファミリア」に次いで人気があります。
今回はそんな、「カサ・バトリョ」について詳しくご紹介させていただきます!
【カサ・バトリョ:基本情報】
〖歴史・概要〗

「カサ・バトリョ」は、1877年に建てられた集合住宅をオーナーの「バトリョ」が「ガウディ」に増改築を依頼、5階建ての建物の地下1階と地上6階、そして屋根裏を1904年から1906年にかけて増築・リフォームし、現在の姿になりました。2005年には【ユネスコ世界遺産】にも登録されています。
隣接する「カサ・アマトリエール」への対抗心から、より豪華に際立たせたいという思いで全面リフォームを行ったそうで、地中海からインスピレーションを受けたという建築は、一切の直線的表現を排除して、全体を自然の曲線美で装飾しています。ちなみに、「カサ(Casa)」はスペイン語で「家」を意味するため、「カサ・バトリョ」=「バトリョ邸」となります。
「ガウディ」が完成させた当時から、別名「骨の家」・「あくびの家」とも呼ばれる、ユニークな外観の建物も長い間、個人所有だったため未公開でした。それが初めて公開されたのが「ガウディ生誕150年」にあたる2002年のこと。ちなみに現在の「カサ・バトリョ」の所有者は、地元バルセロナの企業で世界的に知られた、あの飴玉の「チュパチャプス社」となっています。
〖住所〗
Passeig de Gràcia, 43, 08007 Barcelona,
〖電話番号〗
+34932160306
〖アクセス〗

「カサ・バトリョ」は、バルセロナの目抜き通りである「グラシア通り」に面した場所にあります。最寄りの「パセッチ・ダ・グラシア駅」がすぐそばにあるため、地下鉄でアクセスするのが一番分かりやすくおすすめです!もう一つの「ガウディ建築」・「カサ・ミラ」からも近く、徒歩5分ほどで行くことができます。
【地下鉄】:「2号線」・「3号線」・「4号線」の「パセッチ・ダ・グラシア(Passeig de Gracia)駅」から徒歩1分。
【バス】:「7」・「22」・「24」・「H10」・「V15」番のいずれかでアクセスすることができます。
【Renfe近郊線】:「Renfe」の「パセッチ・ダ・グラシア(Passeig de Gracia)駅」から徒歩1分。
【入場方法】

「カサ・バトリョ」の入場口は、【ブルー】・【ゴールド】・【シルバー】で分かれており、「ゴールド」を予約した方は、並ばずに正面入り口から入ることができます。「GOLD PRIORITY」と書かれた看板が出てます。
「ブルー」を予約した人は「BLUE & AGENCIES」の看板がある列、シルバーを買った人は「SILVER」の看板がある列に並びましょう。当日券を買いたい方は「TICKET OFFICE」という看板がある列に並びましょう。

入口では「オーディオガイド(SmartGuide)」が配布されており、これは通常チケットで受け取る事が出来ます。タッチパネルのスマートフォンタイプになっており、番号をタップするとそれに対応した箇所のガイドが流れる仕組み(日本語対応)。また、「カメラ」と「GPS」が内蔵されていて、館内にカメラを向けると建築当時の内装が映し出される仕組みになっています。
〖入場料金〗

【VISIT CASA BATLLÓ(一般チケット)】
「カサ・バトリョ」の「VISIT CASA BATLLÓ(一般チケット)」には、【ブルー】・【ゴールド】・【シルバー】の3つのランクがあり、ランクが高いチケットほど、混雑時に優先入場できたり、特別な特典が付与されます。
※()内はオンライン予約した場合の割引料金になります。
【BLUE -ブルーチケット】:一般29 €(25 €)/学生26 €(22 €)/7〜12歳26.00 €(22 €)
・優先入場なし、最も安価なチケット。冬場のローシーズンなどはこのチケットでもほぼ並ばずに入場できる事が多いです。スマートフォン型のビジュアルガイド(日本語 / イヤフォン付)がセットになっています。
【SILVER -シルバーチケット】:一般37 €(33 €)/学生34 €(30 €)/7〜12歳34.00 €(30 €)
・SILVERチケット専用のレーンから優先入場が可能。夏場のピークシーズンは多少並ぶこともありますが、BLUEチケットよりは優先的に入場が可能です。スマートフォン型のビジュアルガイド(日本語 / ヘッドフォン付)の付属はもちろん、「BLUE」では入場できない「プライベートホール」への入場特典も含まれています。
【GOLD -ゴールドチケット】:一般39 €(35 €)/学生36 €(32 €)/7〜12歳36.00 €(32 €)
・GOLDチケット専用のレーンから最優先で入場が可能。スマートフォン型のビジュアルガイド(日本語 / ヘッドフォン付き)の付属はもちろん、プライベートホールへの入場、当時の衣装に着替えて写真撮影、キャンセル料金無料などの特典が付帯しています。
【MAGIC NIGHTS(夜間入場チケット)】※夏の時期の水曜~土曜日限定
「夜間入場チケット(MAGIC NIGHTS)」は、「夜間見学」+「カサ・バトリョ」内でのコンサートがセットになったチケットです。所要時間は計2時間。コンサートの内容はフラメンコ、ジャズ、ルンバなど予約日によって異なります。一般チケットと同じく、【ブルー】・【ゴールド】・【シルバー】の3つにランク分けされています。ゴールドチケットには、プライベートホールへの入場、優先入場(ファストパス)、キャンセル無料、プレゼント特典が含まれています。
・ブルーチケット:39ユーロ
・シルバーチケット:47ユーロ
・ゴールドチケット:49ユーロ
【BE THE FIRST!(早朝入場チケット)】
「早朝入場チケット(BE THE FIRST!)」は、開館時間の30分前(朝8時30分)に入場できるチケットです。混雑を避けて、館内をゆっくりと見学・写真撮影できるのがメリット!チケットのランク分けはなく、料金は一律39ユーロです。
【THEATRICAL VISIT(ガイド付きツアーチケット)】
ガイド付きツアーチケット(THEATRICAL VISIT)は、ガウディに扮したガイドが館内を案内してくれるツアーです。ガイドの言語は英語とスペイン語なので、参加するメリットは低いでしょう。チケットのランク分けはなく、料金は一律37ユーロです。
※【事前予約は必ずしていこう!】※
「カサ・バトリョ」は、バルセロナでも屈指の人気観光スポットです。そのため事前に入場チケットを予約していかないと、希望の時間に入場できないどころか、チケットが売り切れて入場できないこともあります。通常であれば「ブルーチケット」を予約していけばOKです!夏の観光シーズンや週末に訪れる場合は、優先入場付きの「ゴールドチケット」の方が並ばずに済みます。いずれも現地のチケット売り場で当日券を購入するとネット予約よりも4ユーロ高くなるので、節約のためにも予約していくのがおすすめです!
【チケット予約・購入方法】

「カサ・バトリョ」の【公式サイト】から購入する場合は、英語での予約となります。以下では最もポピュラーな「VISIT CASA BATLLÓ(一般チケット)」の「ブルーチケット」の予約方法を紹介していきますが、「シルバーチケット」や「ゴールドチケット」でも基本的な手順は同じです。
①:まずは【公式サイト】を開き、「VISIT CASA BATLLÓ(一般チケット)」の「BUY(Tickets)」を選択クリック。

「VISIT CASA BATLLÓ(一般チケット)」を選択すると【ブルー】・【ゴールド】・【シルバー】にランク分けされたページが表示されます。購入するチケットが決まったら「BUY TICKETS」をクリックします。

②:入場日と入場時間を選択

カレンダーの日付をクリックし、予約日を選択します。

その後、予約時間の候補が表示されるので、希望の入場時間を選択します。上の部分に表記されている時間帯「09:00~11:45」/「12:00~14:45」/「15:00~17:45」/「18:00~19:45」をクリックすると、候補の時間帯を切り替えることができます。
※時間帯の下に表示されている緑の線は、チケットの残数を表しています。残りわずかの場合は赤、少し減っている場合は黄色、十分にある場合は緑で表示されます。
③ :人数(枚数)の選択

大人は「General」/65歳以上は「Senior」/7~12歳は「Junior」となり、それぞれ右側にある+ボタンをクリックして枚数を決めます。6歳以下の入場は無料ですが、予約は必要なので「Children」も忘れずに入力して下さい。購入枚数を選択し終わったら「CONTINUE」ボタンをクリックします。

するとプロモーションコードの入力画面が表示されるので、何も入力せずに「CONTINUE」ボタンをクリックします。
④ :個人情報の入力

ここからの予約者情報の入力画面から予約完了までは、制限時間15分以内で済ませないといけません。時間内に予約を完了させないと、最初からやり直しになるので注意して下さい。※印の付いている箇所が必須の入力項目になります。

①Name:名前
②Email address:メールアドレス
③Repeat your email address:確認用にもう一度メールアドレスを入力
④Country:国籍(Japanを選択)
※電子メールアドレス宛に電子チケットが届くので、間違がないかよく確認してください。
予約者情報入力欄の下にある「Is this purchase a gift?」は、ギフトにする場合の選択項目なので無視して構いません。
また、支払方法の欄でクレジットカードが選択されているかを確認します。次に「利用規約に同意する」の□に2カ所チェックを入れます。真ん中の□は「メールマガジンの配信希望」なのでチェックを入れなくて大丈夫です。最後に画面一番下の「PAY」をクリックします。
⑤ :カード情報入力画面&通貨の選択
※「VISA」・「MasterCard」・「JCB」・「AMEX」が使用可。

「クレジットカード番号」を16桁スペースを空けずに入れ、「有効期限(月/年)」、「セキュリティコード(クレジットカード裏にある3桁の番号)」を入力し「Accept」を押します。
次の画面では「円」もしくは「ユーロ」のどちらで決済するかを選びます。
※クレジットカード会社の決済が2,3日遅れて反映されますので、その間に発生する為替レートの変動で微妙に変わります。
⑥:購入完了・チケットの印刷(推奨)

登録したメールアドレス宛にPDFで電子チケットが届きます。入場時は、QRコードを読み取らせるので、スマホでPDFを表示しても入場できますが、念のため印刷して持って行くことをおすすめします!

以上が公式サイトでの購入方法になりますが、いざ英語サイトでの購入となると、不安がつきものですよね。希望の日時にきちんと予約が取れているか、予約したチケットに不具合がないか、当日まで不安な気持ちで過ごされる方もいらっしゃると思います。
その場合は日本語予約できるツアー会社を利用するのをおすすめします!日本語で購入でき、サポートも日本語ですので安心ですし、また【公式サイト】とほぼ同額で購入できるのも嬉しいポイントです!➡
※【チケット予約の注意点】※
・予約したチケットのキャンセルは不可。ゴールドプライオリティのみキャンセルすると料金が返金されます。
・入場料無料の7歳未満の子供もチケットを予約する必要があります。
・無料チケットや割引チケットを購入する方は、当日年齢などを証明する公的書類(パスポートなど英文のもの)が必要。学生は国際学生証が必要。
・4月~9月頃まではオンシーズンで、特に夏は非常に混むので数日前には予約しておきましょう。前日だと希望の時間の予約が取れない場合もあります。
・人気スポットのため非常に混み合います。人混みを避けたいならば朝の9時頃、もしくは開館時間前に入場できる「BE THE FIRST!」がおすすめ!特に写真撮影を重視しているなら、混む時間帯は避けた方がいいでしょう。
・印刷したチケットは、QRコード部分を傷つけたり折り曲げたりしないように注意してください。
〖営業時間〗

9時00分~20時00分
※最終入場は閉館30分前
〖定休日/休業日〗
なし
〖公式サイト〗
〖所要時間〗

所要時間はオーディオガイドを聞きながらじっくり回ることを想定して、1時間〜1時間30分が目安です。ただし、当日に入場チケットを購入する場合は、行列に並ぶ時間も考慮しておきましょう。
〖注意事項〗
・館内でカメラの三脚は利用できません。
・ベビーカーの貸し出しはありません。
・ベビーカーやスーツケースをお持ちの方は、置くスペースがあるので置いてから見学することができます。
・足腰が不自由な方や妊婦の方はエレベーターを利用することができます。
・建物内での飲食や喫煙、大声を出す、走るといった迷惑行為は禁止されています。
【カサ・バトリョ:魅力・見どころ!】

引用元:公式サイト
「カサ・バトリョ」には明確な見学順路があるため、その順路に沿って行けば自ずと見どこ
ろを全て網羅することができます。以下が最も一般的な館内の見学順路になります。
・玄関ホールの中央階段(バトリョ家専用の階段)➡・中央サロン(暖炉の部屋)➡・ダイニングルーム➡・裏庭(テラス)➡・吹き抜け➡・屋根裏➡・屋上

見学時に配られる「スマートビジュルアルガイド」の再生ポイントは14箇所ほどありますが、上記6カ所の見学ポイントを巡って行けば、自然と網羅できます。館内は小部屋が入り組んでいる場所がありますが、進行方向は限定されているので迷う事はまずないでしょう。

また、館内の至る所にある「VISIT」や見学番号が書かれた星型の「案内板」に従って、1から順番に見学して行ってください。ちなみに各見学ポイントに割り振られている番号は、館内で配布される「スマートビジュアルガイド」の再生番号になっています。
〖外観・ファサード〗

「カサ・バトリョ」最初の見どころは「外観・ファサード」!「カサ・バトリョ」は、「カサ・アマトリェール」と「カサ・リェオ・イ・モレラ」に挟まれており、「不協和音の一画」と言われるくらい、両隣とは一線を画す外観となっています。

「ガウディ」の独特な世界観を表現し、外壁は波をうっており、まるで海面でゆらゆらと揺れる波のようです。それに加え、外から見たバルコニーは骸骨や仮面のようにも見てとれ、「ガウディ」の設計手法である「自然」を思う存分発揮している部分と言えます。

そして、「カサ・バトリョ」の屋根の造形には3つの説があり、その説の背景をイメージしながら館内を回ると非常に楽しく回れます。
1. 聖人「サンジョルディ」の伝説にあるドラゴンである説。石柱が骨、バルコニーが骸骨に見えるため、「骨の家(Casa dels Ossos)」とも呼ばれドラゴンの犠牲になった人たちの骨を表しているとも。
2. 屋根をアルルカンの帽子に見立て、バルコニーは仮面、「ジュゼップ・マリア・ジュジョール」の手に寄る様々な色の破砕タイルが祭りの紙吹雪を表しているとする謝肉祭説。
3. 外壁を含めて海をイメージしている説。
以上の3つがあり、どれもその説が当てはまっているのではないかと思わされるような邸宅になっています。更に、様々な見方ができる外観は、廃棄物をリサイクルして作られているといのも忘れてはいけません。タイルやガラスは、バルセロナの会社から譲り受けた物からできており、デザインに加えて、素材もユニークなのも「ガウディ」の魅力のひとつです!
【外壁のテーマは海】

屋根については諸説ありますが、「外壁(建物全体)」のテーマは「海」と言う事でほぼ間違いないようです。以下では「海」ということを前提に解説していきます。

まず、「ファサード(建物正面)」は海面のように波打ち、その表面には青を基調とした「トレンカディス(破砕タイルのモザイク)」に加え、ガラスの破片も同時に大量に使うことによって、壁面全体がキラキラと輝くまるでサンゴ礁の海を表現しています。

建物の最上部にある小さな穴は屋根裏部屋の窓で、その左右横にある2つの鉄のアームは、大型の家具を入れる際に滑車を取り付けてクレーンの様に使った昔の名残。また、その間にある小さな窓と白いチューリップ型囲いは屋根裏部屋のバルコニーです。

そして建物の下部を見ていくと、まず目につくのが「開口部」が異常とも言えるほどに大きな「窓」です。「ガウディ」は改装するにあたり、可能な限り陽の光を取り入れるため、元々あった2,3階部分の外壁を大胆に取り壊しました。建物の端から端まで広がり波打った窓枠その上部を見るとちょうど、それはコウモリが羽を広げた様にも見えます。
〖玄関ホールの中央階段(バトリョ家専用の階段)〗

「オーディオビジュアルガイド」を受け取り先へ進むと現れるのが、不思議なデザインをした「青い壺」と「ドラゴンの背骨」をイメージしたと言われる「玄関ホールの中央階段」です。この階段は、「バトリョ家専用」のもので、それ以外の居住者達は、館内に入ってすぐの「居住者用の階段」を利用していました。

ちなみに、階段のすぐ側にはもう一つの入り口があり、オーナーの「バトリョ家」と上階に住む「借家人(店子)」の入り口がそれぞれ独立していたことがわかります。また、「バトリョ家」の入口横には管理人の小部屋があり、その右手には掃除用具などを入れる収納スペースとして物置が配置されています。そこには特別にあつらえた専用の縦長楕円形の扉が2つあるのですが、ただの物置にも一切手抜きしない「ガウディ」の職人魂が感じ取れます。

階段のデザインは一切の直線を廃し、手すりなどは人間工学に基づいて手に馴染みやすい様に設計されました。更に手すりの下には波打つ板があるのですが、これは手すりの間から幼児が落下するのを防止するためのものです。

階段横の壁面を注視して見ると、竜のウロコ模様になっているのが分かります。壁面の模様部分は凹凸がある様に見えますが、全て手書きの平面です。ちなみに、階段に「ビジュアルガイド」をかざすと、ドラゴンが天に登っていく映像が現れます。

更に頭上に目を向けると、亀の甲羅をイメージした天窓があります。これは日中、建物中央吹き抜けのパティオに降り注ぐ太陽の光を、本来最も暗くなるこの空間に取り込むようにしたものです。楕円の窓枠はトネリコと呼ばれる木を使ったもので、テーブルや椅子などの制作にもガウディはこの木材を好んで使いました。

階段から天窓にかけて「ビジュアルガイド」をかざすと、可愛らしいウミガメが泳いでいく映像が現れますよ!
〖暖炉の部屋〗

階段を上がると「暖炉の部屋」があり、ここはオーナーの「バトリョ氏」の「執務室」として使われていましたが、「ガウディ」はここが下の入り口から階段までの「パブリックスペース」とこの部屋の奥にある「バトリョ家」のプライベートスペースへの移行空間として位置付け、その様な役割を与えていました。

「カサ・バトリョ」の装飾は海をイメージした寒色系の部分が多いですが、このエリアの壁一面に施されたモザイク模様には金箔が使われており、メルヘンチックなキノコ型の暖炉が設置されています。暖炉のみならず部屋を壁に埋め込むという発想は、キノコ型と共に「ガウディ」らしさが表れていますし、何らかの意味を秘めているとも取れます。

また、両脇の木製のベンチをよく観察すると、片側が2人掛けで反対側が1人掛けと変則的になっています。これには理由があり、暖を取ることはもちろんですが、同時に一寸した談話室にもなっており、時に閉ざされた小さな空間で年頃の男女が2人きりになることもありました。そのため、暖炉を挟んで向いのベンチにお目付け役の女中が座るための1人掛けベンチとなり、変則的になっているのです。

部屋の窓や扉も「ガウディ」自身がデザインしたもので、その場所にある扉や窓の開口部分にしか合わない一点ものとなっています。素材にはオーク材などが使用されています。
〖中央サロン〗

「暖炉の部屋」の先には、「グラシア通り」に面した「中央サロン(主広間)」があります。広さ450m2ある主階の中で最も広いエリアで、外壁にユニークな骨の柱が装飾され、大きな窓、水玉模様の丸いステンドグラスは海水の飛沫を表現し、実際ステンドグラスを通して差し込む太陽の光は、まるで海面を反射するようにキラキラと輝いています。

かつて、このサロンにはたくさんのソファーが置かれ、「バトリョ家」の団らんの場として使用されていました。サロンの左右にある扉は、普段は独立した部屋を必要に応じてアコーディオンの扉を全開してつなげ、一つの大きなスペースにすることで親しい友人などを招いてパーティなどの社交の場として利用する為のものです。

そして「あくびの家」と揶揄されるほどの他のバルセロナのどの家にも無かった大きな窓には、「ガウディ」ならではの工夫・こだわりが施されています。普段は決して開けられることは無い窓なのですが実は開けることができます。そして、その開け方も独特で左右にではなく上に。近づいて、よく見ると各窓には窓を持ち上げるケーブルが付いているので、行かれた際はよく確認してみて下さい!

このように柱、ステンドグラス、窓枠に至るまで、「ガウディ」が自然界からインスピレーションを受けた曲線フォルムでデザインされています。窓の取手さえも曲線で造られています。

天井にも曲線が用いられ、まるでアンモナイトの化石の様です。

ちなみに、大通り側にサロンを配置するのは太陽の光が一番入ると言う事もありますが、それ以外にも大きな意味がありました。それはバルセロナの一番のメイン通りである「グラシア通り」、そこに建つ贅を尽くした目立つ屋敷。前を道行く人達からの羨望の眼差しで見上げられていた場所でもあり、その通りを上から見渡すサロンこそが当時のブルジョア階級の特権意識が現れている場所でもあるのです。

また「中央サロン」の右側は小部屋になっており、部屋の広さに不釣り合いなシャンデリアが飾られています。扉の上のステンドグラスは、大窓と同じ丸いデザインで、よく見ると周りの白い壁には、細かい鱗模様が描かれています。

更に廊下に出ると、中央の吹き抜けに面した素敵なデザインの窓があるのですが、「カサ・バトリョ」のすごい所が、扉や窓枠に通気口が備わっている点です。こちらの窓はガラスの下にある格子状の部分にあり、デザイン性だけでなく、機能性もしっかりと兼ね備えた建物だと改めて感心させられてしまいます。

廊下には、「カサ・バトリョ」の模型が展示されているのですが、この模型に「ビジュアルガイド」をかざすと、建物が一瞬で崩れていく映像が映し出されます。
〖ダイニングルーム〗

「中央サロン」を堪能し、順路にそって建物奥に進むと「ダイニングルーム」へとやってきます。友人・知人などを招いて、社交の場としても使われた大通りに面した「中央サロン」とは打って変わり、「ダイニングルーム」は建物の一番奥に位置していることもあり、外からの雑音も無くここが家族の本当の意味での完全プライベート空間でした。また、ここから廊下を介して「使用人の部屋」と繋がっており、更に使い勝手が良い様に2つの寝室がこの両脇に位置しています。

天井は波打っており、細かいひび割れのような模様がびっしりと描かれています。また「ミルククラウン」と呼ばれる不思議な装飾がなされており、住居として使われていた頃はその中心に照明のランプが吊られていました。
※ミルククラウンとは液体を一滴落とすと美しい王冠状の形を形成する現象の事。

また、可能な限り太陽の自然光を取り入れるために作られた大きな窓。そして、100年前にデザインされたと思えないパステルカラーのモザイクの柱。この珍しい二本で一対となっている柱は、「グラナダ」の「アルハンブラ宮殿」にある「ライオンの間」にインスピレーションを得たと言われています。

「ダイニングルーム」では、「スマートビジュアルガイド」の映像や室内に展示されている当時の写真などを見ながら、かつて「バトリョ家」が食事をした様子を創造してみてください!
〖裏庭(テラス)〗

「ダイニングルーム」を出ると、「グラシア通り」に面する正面「ファサード」の反対側に位置する「裏庭(テラス)」にやってきます。

ここでは「カサ・バトリョ」の建物の裏側を見る事でき、裏側「ファサード」の高さは23.5メートルほど。正面「ファサード」と比べると装飾的にやや地味に感じますが、うねる様なフォルムは正面「ファサード」よりも大胆になっています。

また、建物の上部には「トレンカディス(粉砕タイル)」の装飾が施され、その上には花柄があしらわれています。なお、「トレンカディス(粉砕タイル)」の装飾オブジェクトは、裏庭の奥や入口付近にも飾られており、正面「ファサード」および、この裏庭の「トレンカディス(粉砕タイル)」は、「ガウディ」のパートナーで弟子の「ジュジョル」が手がけました。

隣の建物との仕切り壁は、波打った形をし、カラフルな破砕タイルで装飾されています。出っ張った部分は、タイル製のプランターになっているので花が植えられるようになっています。また、「テラス」の出入り口の左右にあるガラスで覆われた青い池の様な穴は、その下にある地下室へ光を入れる天窓です。

こちらは、出入口の横にあった破砕タイルのオブジェで、よく見ると様々な色のリサイクルガラスが利用されており、一つのアート作品のようになっています。
〖吹き抜け〗

「裏庭(テラス)」の見学を終えたら、再び「ダイニングルーム」を通って少し通路を戻り、「VISIT 9-14」の案内板のある所から「吹き抜け」のエリアに出ることができます。

こちらの階段は、地上階の「メインエントランス」から「屋根裏」のエリアまでを結んでおり、階段を降りて行けば最初に「オーディオガイド」を受け取った場所まで戻る事ができます。ただし、階段を上って行くのが順路なので、「吹き抜け」を見学しながら「屋根裏」を目指しますようにしましょう!

建物内部の「中央パティオ」は、海底や海底洞窟をイメージして造られており、別名「光庭」とも呼ばれます。4つの壁面には「ガウディ・ブルー」とも称される海底をイメージした青の市松模様のタイルが、所々カメオ式の立体のタイルと共に斜め45度の角度で貼られています。

「吹き抜け」のタイルは下から見た時に全体が同じ色に見えるよう工夫して色付けされており、下階の方が白く、上階にいくにつれて水色~青色へと合計で5段階に変化。さらに天窓からの光を取り込むため、窓は上階が小さく下階へいくほど大きくなっています。

また、窓に注目すると、明り採りの窓は上の階ほど小さく、逆に下の階になるほど大きくすることにより、部屋に射し込む日差しの均等化を同時におこなっています。上の大きい方が「採光」、下の小さな方が「換気用」となっており、光以外にも換気と熱の循環まで綿密に計算し尽くされています。これにより、それまで上階の部屋の温度が夏季に上がり過ぎる問題を解決しました。なお、この手法はこの後に建設された「カサ・ミラ」の「パティオ」に面した窓でも使われています。

また、扉やドアノブも「ガウディ」がデザインし、ぐねぐねとしたユニークな仕上がりになっています。ドアノブも握りやすさにこだわり、人の手になじむよう設計されています。

更にガラス板にまで「ガウディ」のこだわりが感じられ、ガラスの表面には凹凸があり、背景となるタイルの青が揺らぎ、まるで目の前にほんとうの海があるような、そんな錯覚を与えてくれます。
〖屋根裏〗

吹き抜けの階段を登り切ると、「屋根裏」に到着します。「屋根裏」は、「ガウディ」が元々あった建物を「カサ・バトリョ」として改装する際に増築した部分の一つで、「竜の胸壁」をイメージしています。

フロア全体は約60本の「カテナリーアーチ(放物線アーチ)」の柱によって支えられ、素材には漆喰を塗ったカタルーニャ式レンガが使用されています。また、壁面に無数の穴をあける事で採光や換気機能をもたらしつつも、外部の暑さや寒さを遮って温度を一定に保つ様に設計されています。
※カテナリーとはロープや鎖などの両端を持って垂らしたときにできる曲線のこと。

そのため、「洗濯場」・「収納庫」・「貯水庫」としての機能を備えたスペースとなっており、当時はこの場所で洗濯が行われ、一つ上の「屋上」に洗濯物を干すという流れでした。

ここから、順路通りに進んでいくと「プロジェクションマッピング」が行われている部屋があり、「カサ・バトリョ」の模型にアニメーションが次々に映し出されます。イスも設置されているので、ゆっくりと座って鑑賞することもできます。
〖屋上〗

「屋根裏」の見学を終えたら、階段を上って「屋上」に移動します。「カサ・バトリョ」が制作された20世紀初頭は、屋上にデザイン性の高い装飾を施すという事はほとんどありませんでしたが、この屋上にも「ガウディ」の個性が惜しみなく発揮されており、カラフルな煙突や換気塔が並んでいます。

ちなみに一説によると、魔物が家に侵入する際に煙突こそが一番の弱点と言う意識が中世の昔から人々にあり、ここを守る意味で荒々しく武器の様に尖った煙突にしたり、また「カサ・ミラ」の場合では兵士の顔になっているのもその為です。この「カサ・バトリョ」の煙突も先がとがり横にはカバーが付いており、魔物が侵入できないように開口部を隠した造りになっています。

そんなキノコ型が特徴的な煙突の素材には、セラミックやガラス片が使用され、「トレンカディス(粉砕タイル)」の装飾が施されています。煙突の装飾は、「ガウディ」がその色彩能力を高く評価していた弟子の「ジュジョル」が手がけました。キノコ型の煙突は屋上の至る所に配置(合計27本)され、エレベーターも置かれています。

ドラゴンの背中を連想させる装飾も見事で、右側の球根型のオブジェクトの素材にはマジョルカ産のセラミックが使用されています。その反対側のタイルはオレンジ色の細かなモザイクのピースを使うことにより、爬虫類の腹をイメージしたもので、非常に考えられた造りとなっています。
〖その他:魅力・見どころ!〗
【家具】

「ガウディ」が作るのは建造物だけではなく、個人向けの邸宅を作る場合には、オーナーのために一緒に家具をデザインすることもあります。ここ「カサ・バトリョ」でも、「バトリョ氏」のためにデザインされた「家具(机とベンチ)」を見ることができます。
点数こそ少ないものの、元々この建物に合わせてデザインされたものだけあり、絶妙な調和を見せています。また、「ガウディ」作の家具を眺めながらお茶を飲めるカフェもあるので、観光中に一息つくのにもピッタリです!ちなみに、ここに残されていない「ガウディ」の家具のほとんどは、「カタルーニャ美術館」に展示されています。
【カサ・バトリョの模型】

模型自体はさほど特徴はありませんが、屋根裏の構造マップもあるため、興味のある方はじっくり見学ください!
【ホログラム映像】

出口へ向かう途中、かつては「使用人の部屋」だったという「カテナリーアーチの広間」があります。ここには「カサ・バトリョ」に関連したホログラム映像が見学できるコーナーがあるのですが、「ガウディ」が「さようなら」と観光客に手を振ってくれるなど、中々おもしろいコーナーです。
【有料の写真撮影】

ホログラム映像コーナーの近くには、有料の写真撮影コーナーがあります。有料で10ユーロほどかかりますが、「カサ・バトリョ」の特徴の一つである色鮮やかな壁面をバックにかなり映える写真を撮影してもらえるため、記念におすすめです!
撮影から現像までわずか数分で、写真は撮影場所の近くにあるカウンターで受け取る事ができます。
【ライトアップ】

夕暮れ時に向けてライトアップされる「カサ・バトリョ」。光がバルコニーや装飾されている壁を美しく照らしています。立地が良いため「グラシア通り」でのショッピング後、夕食後などに是非立ち寄ってみてください!
【ギフトショップ】

吹き抜けの階段から「ギフトショップ」の案内に沿って扉を抜けると、「ガウディ」がデザインしたお洒落なチェアーが迎えてくれます。この右手側が「ギフトショップ」の入口になっています。

「ギフトショップ」はそこまで広くありませんが、オシャレなレイアウトでたくさんの商品が販売されています。お土産の定番である「マグカップ」・「タンブラー」・「マグネット」はもちろん、「カサ・バトリョ」や「ガウディ」関連が中心の書籍類も豊富なラインナップが揃っています。

この他にも、「マウスパッド」・「シャツ」・「扇子」・「ステンドグラスの栞」・「絵葉書」・「カレンダー」・ワイングラスに付ける「ミニ・ランプシェード」・「トラベルセット」など、たくさんグッズがありますので、お気に入りのグッズを探してみてください!
【プライベートホール】

ショップを出た場所には、「シルバーチケット」と「ゴールドチケット」だけが入場できる「プライベートホール」の入り口があります。「プライベートホール」の入口は非常にわかりにくいですが、「ギフトショップ」の入口の対面側にあります。「ギフトショップ」の前に展示されている木製チェアーを正面にして左手側が入口です。

「プライベートホール」は、20世紀初期の家具で彩られ、当時の様子が再現されています。また、「ゴールドチケット」の方は入場に加えて、当時の衣装に着替えて撮影が可能です。男性用と女性用の衣装があるので、カップルの方には良い記念になると思います。せっかくなら是非撮影を楽しんでください!写真はその場で現像して受け取る事ができます。

いかがでしたでしょうか。
「ガウディ」独特の有機的なフォルムによって埋め尽くされたこの建築は、彼にとっては数少ない集合住宅であることや数少ない増改築による建物である、ということに加えて、彼が生涯にわたって追求した表現が、もっとも端的に表されている例として、大変貴重な建築物です。
すべてが曲線で構成された入り口ホールや、ガウディが細部までデザインした階段や扉、屋上のオブジェのような煙突、大窓が目を引く外観、人工工学に基づいて設計された家具など、見どころがたくさん!日本語のオーディオガイドもあり、より深くガウディワールドを理解しながら見学することができますので、是非とも1度訪れてみてください!
【基本情報】
カサ・バトリョ(Casa Batlló)
住所:Passeig de Gràcia, 43, 08007 Barcelona,
電話番号:+34932160306
アクセス:
「カサ・バトリョ」は、バルセロナの目抜き通りである「グラシア通り」に面した場所にあります。最寄りの「パセッチ・ダ・グラシア駅」がすぐそばにあるため、地下鉄でアクセスするのが一番分かりやすくおすすめです!もう一つの「ガウディ建築」・「カサ・ミラ」からも近く、徒歩5分ほどで行くことができます。
【地下鉄】:「2号線」・「3号線」・「4号線」の「パセッチ・ダ・グラシア(Passeig de Gracia)駅」から徒歩1分。
【バス】:「7」・「22」・「24」・「H10」・「V15」番のいずれかでアクセスすることができます。
【Renfe近郊線】:「Renfe」の「パセッチ・ダ・グラシア(Passeig de Gracia)駅」から徒歩1分。
入場料金:上記参照
営業時間:9時00分~20時00分
※最終入場は閉館30分前
定休日/休業日:なし
所要時間:
所要時間はオーディオガイドを聞きながらじっくり回ることを想定して、1時間〜1時間30分が目安です。ただし、当日に入場チケットを購入する場合は、行列に並ぶ時間も考慮しておきましょう。
注意事項:
・館内でカメラの三脚は利用できません。
・ベビーカーの貸し出しはありません。
・ベビーカーやスーツケースをお持ちの方は、置くスペースがあるので置いてから見学することができます。
・足腰が不自由な方や妊婦の方はエレベーターを利用することができます。
・建物内での飲食や喫煙、大声を出す、走るといった迷惑行為は禁止されています。
※記事内容は執筆時点のものですので、最新の内容をご確認ください。
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